Monday, October 13, 2025

ノーベル平和賞受賞者マリア・コリナ・マチャドは、イスラエルのジェノサイドとトランプの対ベネズエラ戦争を支持している:ベン・ノートン Ben Norton: Nobel Peace Prize winner supports Israel’s genocide & Trump’s war on Venezuela (Japanese Translation)

米国によるベネズエラ内政介入、制裁、戦争行為を手助けしてきたマリア・コリナ・マチャド氏のノーベル平和賞受賞について、ベネズエラ情勢をよく知っているジャーナリストやアナリストから多くの疑問の声が上がっています。そのうちのひとつ、『ジオポリティカル・エコノミー』より、 中南米の情勢に詳しいジャーナリスト、ベン・ノートン氏の最新記事の日本語訳を届けます。(AI訳に手をくわえたものです。翻訳はアップ後修正することがあります) 

原文:

Nobel Peace Prize winner supports Israel’s genocide & Trump’s war on Venezuela

https://geopoliticaleconomy.com/2025/10/13/maria-corina-machado-israel-genocide-trump-war-venezuela/

ノーベル平和賞受賞者はイスラエルのジェノサイドとトランプの対ベネズエラ戦争を支持している

ノーベル平和賞受賞者マリア・コリナ・マチャドは、米国政府から資金提供を受けたベネズエラの極右クーデター計画者である。彼女はジェノサイドを行うイスラエルを支持し、マドゥロ大統領に対するトランプの体制転覆戦争の中心的存在である。

ベン・ノートン

2025年10月14日

2025年のノーベル平和賞は、数十年にわたって米国政府から資金提供を受けてきたベネズエラの極右クーデター指導者、マリア・コリナ・マチャドに授与された。

マチャドは公然と、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領率いる革命的チャビスタ政権を打倒するため、米軍によるベネズエラ侵攻を呼びかけてきた。

彼女は、ドナルド・トランプがベネズエラに対して仕掛けた戦争の中心にいる人物である。マチャドは、トランプ政権が根拠も証拠も示さずに「麻薬密売人を殺害している」と主張して行った、国際水域でのボート上のベネズエラ人に対する米軍の超法規的処刑を支持した。

またマチャドは、数十万人のベネズエラ人を死に追いやった、米国による違法で一方的な制裁も支持している。

さらにマチャドは、ガザでパレスチナ人民に対してジェノサイドを行っているイスラエルを断固として支持している。

 

 戦争犯罪者へのノーベル平和賞

マチャドのような好戦的な極右のクーデター計画者にノーベル平和賞が授与されたという事実は、この賞がいかに極めて偽善的なものであるかを示している。

この偽善は、いまに始まったことではない。

米国の帝国主義的戦略家ヘンリー・キッシンジャーは、現代史上最悪の戦争犯罪人の一人であり、ベトナム、カンボジア、ラオス、バングラデシュ、チリなどで数百万の犠牲者の血に手を染めていたにもかかわらず、1973年にいわゆるノーベル平和賞を授与された。

また、元米国大統領バラク・オバマも2009年に同じく「ノーベル平和賞」を受賞したが、その政権はその後、絶え間ない戦争を遂行した。オバマはアフガニスタン、イラク、リビア、パキスタン、ソマリア、シリア、イエメンの7か国を爆撃した

ノルウェーのノーベル委員会が偽善的だったのはこれが初めてではない。しかし、マリア・コリナ・マチャドに賞を与えることは特に常軌を逸している。なぜなら、第一に彼女がガザでのイスラエルによるジェノサイドを支持し、第二にドナルド・トランプと協力して戦争を仕掛け、暴力によってベネズエラ政府を転覆しようとしている、そのまさに只中での授与だからである。

マリア・コリナ・マチャドはイスラエルのジェノサイド政権を支持する

マチャドは、パレスチナ人民に対してジェノサイドを行ってきたイスラエルを公然と称賛してきた。

国際人道法の著名な専門家らが率いる国連が設置した委員会は、イスラエルがガザでジェノサイドを犯したことを明確に認定している。

2025年1月、マチャドはイスラエルのギデオン・サール外務大臣と電話会談を行い、「イスラエル外務省に感謝の意を表する」と述べ、「イスラエル政府の支援を非常に高く評価している」と語った。

このジェノサイド的なイスラエル政権は、ベネズエラの憲法に基づく国際的に承認された大統領ニコラス・マドゥロ政権を承認せず、代わりに米国が支援するクーデター指導者エドムンド・ゴンサレスを承認している。ゴンサレスはスペインに居住し、マチャドの代理人である。

2024年4月、イスラエルは侵略行為としてイランを攻撃し、テヘランは自衛のために反撃した。マチャドはすぐさまX(旧Twitter)に投稿し、イランを非難した。彼女は「イラン政権による直接的な攻撃の中にあって、イスラエル国家への連帯を表明する」と強調した。

マチャドは「イランとベネズエラ政権の同盟がもたらす危険」を非難し、もし米国が彼女をカラカスで政権に就かせることに成功した場合、米国およびイスラエルと連携し、イランとパレスチナ人民に対抗する密接な同盟を形成すると誓った。

2023年にもマチャドはイスラエル支持の投稿を行い、「イスラエルが長く幸福な存在であり続けることを願う」と述べ、ベネズエラの極右野党とジェノサイド的イスラエル政権は共通の「価値観」を共有していると付け加えた。

マチャドの極端な政治姿勢を最も明確に示す例のひとつが2018年である。彼女はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に公開書簡を送り、このジェノサイド指導者に対し、ベネズエラのマドゥロ大統領を打倒するための支援を求めた。

マチャドは書簡の中で、イスラエル、アルゼンチンの右翼政権、そしてその他の「国際社会」の国々に対し、マドゥロ政権に対する「体制転覆を実現するために必要な支援」をベネズエラ野党に与えるよう要請した。

また彼女は書簡の中で、「保護する責任(Responsibility to Protect)」というドクトリンを引用した。これは米国が2011年のリビア戦争を正当化するために用いたものである。米国主導のNATOによるその戦争は、かつて平和で安定し、繁栄していた石油資源豊富な北アフリカの国の中央政府を破壊し、奴隷市場が公然と存在する無法状態の破綻国家へと変えてしまった。

マリア・コリナ・マチャドがイスラエルとアルゼンチンに対し、ベネズエラへの介入と「体制転覆(レジーム・チェンジ)」の実現を求めた2018年の公開書簡


現在、ネタニヤフは、彼の政権がガザで犯した人道に対する罪により、国際刑事裁判所(ICC)から指名手配されている。

ベネズエラはイスラエルと正式な外交関係を持っていない。両国の関係は、革命的指導者ウーゴ・チャベス元大統領およびその後継者マドゥロ大統領によって繰り返し断絶されてきた。両者はいずれもパレスチナ人民の強力な支持者であり、イスラエルのジェノサイドを厳しく非難している。

ベネズエラ政府が公開した、ニコラス・マドゥロ大統領がパレスチナへの支持を表明している写真


マリア・コリナ・マチャドは、ドナルド・トランプによるベネズエラ体制転覆戦争の中心にいる人物

いわゆるノーベル平和賞をマリア・コリナ・マチャドに授与するというのは、彼女が現在、米国政府がベネズエラに対して行っている戦争の中心にいることを考えれば、さらに一層、常軌を逸した行為である。

ドナルド・トランプは複数回にわたって軍事攻撃を行い、罪状も裁判もないままに数十人のベネズエラ人を殺害してきた。国際法を公然と無視して、米軍はベネズエラ周辺の国際水域にあるボートを繰り返し爆撃し、何の証拠もなく、それらが「麻薬を密輸している人々」で一杯だったと主張している。

マチャドは、自国民を罪もなく処刑したこれらのトランプによる攻撃、すなわちベネズエラ人に対する超法規的殺害を含む一連の作戦を支持している。

『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューで、マチャド自身が、ベネズエラのマドゥロ大統領を打倒するため、米国政府と協力していることを認めている。

『フィナンシャル・タイムズ』紙はこう報じている――
「米国が南カリブ海に軍艦を展開したことで、ニコラス・マドゥロ大統領の打倒を目指す地下組織に、数千人のベネズエラ人が加わる動きを後押しした」。

トランプ政権はカリブ海に8隻の軍艦と数千人の兵士を派遣し、さらにプエルトリコにはF-35戦闘機10機を展開したと『フィナンシャル・タイムズ』は伝えている。同紙は、これは1994年の米国によるハイチ侵攻以来、同地域で最大の米軍増強であると指摘した。

「ベネズエラ野党の高官らは、マドゥロ打倒をどのように演出するかを話し合うため、トランプ政権の幹部と連絡を取っている」と同紙は報じている。

『フィナンシャル・タイムズ』はまた、マチャドの発言を引用している。彼女は脅迫的にこう述べた。――「国内外のこの一連の力が、マドゥロとその政権に『自分たちの時代は終わった』ことをますます理解させ、彼らにとって最善の選択肢は今すぐ権力を手放すことだと認識させている」。

米国が彼女を権力の座につけることに成功した場合、マチャドは何をしようとしているのか?

この極右の野党指導者は、別の『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューで、ベネズエラの莫大な石油資源を民営化したいと認めている

「私たちは民営化し、市場を開放しなければなりません。まずはエネルギー部門から始めるのです」とマチャドは2023年に『フィナンシャル・タイムズ』に語った。

国営石油会社PDVSAの売却を呼びかけたうえで、彼女は南米ベネズエラが有する莫大な石油・天然ガス資源や高収益の鉱物についても、「すべて民間投資に開放することになる」と強調した。

同紙は、マチャドがベネズエラ国内で「過激な人物として知られている」とさりげなく言及しているが、これは控えめな表現にすぎない。マチャドは、暴力的で反民主的、かつ悪名高く腐敗したベネズエラ野党の極右急進派の指導者である。

トランプ、「ベネズエラを乗っ取り、石油を搾取したい」と発言

トランプが米国大統領として最初の任期を務めていた際、彼はベネズエラで新たなクーデターを仕掛けた。

2019年、ワシントンは、大統領選挙に一度も出馬したことのない右翼野党政治家フアン・グアイドを、いわゆる「暫定大統領」として一方的に指名した。

その後、米国と欧州の同盟国はベネズエラ政府の資産数十億ドル分を凍結・奪取し、それをクーデター資金として使用するとともに、腐敗したベネズエラ野党の有力者たちの私腹を肥やすために流用した。

2020年2月、ホワイトハウスで米国大統領ドナルド・トランプと会談するベネズエラのクーデター指導者フアン・グアイド


トランプのクーデター計画は、彼の大統領一期目の間に明らかに失敗に終わった。

2023年の共和党集会で、彼は米国の帝国が「ベネズエラを乗っ取り、その石油を略奪する」寸前まで行っていたのだと不満をあらわにし、怒りを込めてこう述べた。

「ベネズエラ。じゃあ、我々がベネズエラから石油を買うってのはどうだ? 私の前政権が終わったとき、ベネズエラは崩壊寸前だった。我々は乗っ取っていただろう。あのすべての石油を手に入れていたはずだ。あんなに近かったのに。」

実際、ノルウェーのノーベル委員会が、いわゆる平和賞をマチャドに授与すると発表した直後、トランプはホワイトハウスで記者会見を開いた。

その場でトランプは、マチャドが自分に電話をかけてきて、マドゥロ打倒を支援してくれたことへの感謝を述べたと明かした。

トランプは、ベネズエラの極右野党を支援してきたことを誇らしげに語り、次のように述べた。

「実際にノーベル賞を受賞した人が、今日(10月10日)私に電話をかけてきたんだ。そしてこう言った。『私はこの賞を、あなたに敬意を表して受け取ります。なぜなら本当はあなたこそが受け取るべき人だからです』とね。」

とても感じのいいことだったよ。私は『じゃあ、その賞を私にくれ』とは言わなかったけどね。彼女はそうしてもよかったかもしれない。とても感じのいい人だった。

それに私は、これまでずっと彼女を支援してきたんだ。ベネズエラでは多くの助けが必要だからね。」

マリア・コリナ・マチャドは、数十万人のベネズエラ人を死に追いやった違法な米国制裁を支持している

マチャドは長年にわたり、米国がベネズエラに対して国際法に違反する制裁をさらに強化するよう主張してきた。

これらの一方的な強制措置は、数十万人ものベネズエラ人の命を奪っている。

2017年、トランプがベネズエラに対して厳しい制裁を課した際、マチャドはそれを称賛し、次のように満足げにツイートした。
「これらの制裁は精密で効果的だ。金融、商業、政治に強い影響を与えるものだ。」

その翌年の2018年、マチャドは「この政権は力によってしか退陣しない」と主張し、「国際的な力――より多くの訴訟と制裁を」と要求した。

国際的な専門家たちは、ベネズエラに対する違法な米国の制裁が、少なくとも数万人、そしておそらく数十万人の死の原因となっていると指摘している。

著名な経済学者マーク・ワイズブロットとジェフリー・サックスは、米国の制裁が2017年から2018年のわずか1年間でベネズエラにおいて4万人以上の死を引き起こしたと算定した。

彼らの調査結果は、ワシントンD.C.の経済政策研究センター(Center for Economic and Policy Research=CEPR)による2019年の研究報告として発表された。


「制裁は食料と医薬品の入手可能性を低下させ、病気と死亡率を増加させた」と彼らは記している。

ワイズブロットとサックスはまた、「制裁が続けば、さらに数万人の回避可能な死をほぼ確実にもたらすだろう」と警告した。

実際、その後も一方的な強制措置は継続しており、違法な米国の制裁によって数十万人のベネズエラ民間人が命を落とした可能性が高い。

このことは、2025年に世界的な医学誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された査読付きの科学研究でも示唆されている。

この後者の研究によれば、一方的な経済制裁は過去50年間、毎年平均56万4千人の超過死亡を引き起こしてきたという。

経済学者マーク・ワイズブロット、フランシスコ・ロドリゲス、シルビオ・レンドンらは、制裁による死者の大半は5歳未満の子どもたちであると結論づけている。


米国は、国際法に違反して、一方的制裁の大半を課してきた責任を負っている。

つまり、ノーベル「平和」賞受賞者マリア・コリナ・マチャドは、自国民のうち数十万人、子どもを含む多くの命を奪った違法な強制措置を支持してきたことになる。

マルコ・ルビオ、マイク・ウォルツ、その他の米国政治家らがノルウェー・ノーベル委員会にマリア・コリナ・マチャドを推薦

米国政府関係者らは、ベネズエラのクーデター指導者マチャドに、いわゆる平和賞を授与するようノルウェー・ノーベル委員会に働きかける上で、重要な役割を果たした。

2024年8月26日、米国議会の複数の右翼議員が委員会に宛てて書簡(PDF)を送った。

「私たちは、マリア・コリナ・マチャドをノーベル平和賞候補として推薦することを支持します」とこの人たちは述べている。

署名者はいずれも共和党議員であった。中には、フロリダ州選出の上院議員リック・スコットとマルコ・ルビオ、下院議員マリオ・ディアス=バラール、マリア・エルビラ・サラザール、マイケル(マイク)・ウォルツ、ニール・ダン、カルロス・A・ヒメネス、そしてニューヨーク州選出のバイロン・ドナルズが含まれていた。

ベネズエラのクーデター指導者マリア・コリナ・マチャドにノーベル平和賞を授与するよう、ノルウェー・ノーベル委員会に働きかけた米国共和党議員による2024年の書簡


現在、マルコ・ルビオはトランプに次ぐ米国政府内で二番目に強い権力を持つ人物である。彼は国務長官と国家安全保障担当大統領補佐官の両職を兼任している(米国史上、この二つの役職を同時に務めるのは、戦争犯罪人でありノーベル平和賞受賞者でもあるヘンリー・キッシンジャーに次いで二人目である)。

マイク・ウォルツはかつてトランプの国家安全保障補佐官を務め、現在は米国の国連大使である。

これらの米国政府高官たちは、マチャドやベネズエラの極端な極右野党と密接に連携し、マドゥロ大統領を暴力的に打倒しようと動いてきた。

ノーベル委員会がマチャドに「平和賞」を与えたことは、同委員会が米国帝国の道具として行動する意思を持ち、「平和」という言葉を皮肉にも利用して、さらなる戦争を正当化しようとしていることを示している。

(日本語訳以上)


Friday, October 03, 2025

【カナダ発公開オンライン講座】「空手の日」に学ぶ:沖縄伝統空手の知られざる歴史 In Commemoration of the Karate Day: The Untold History of Traditional Okinawan Karate, by Kazumi Marthiensen

 カナダ・アルバータ州レスブリッジにお住まいの沖縄出身の空手家、マースィエンセン和美さんを講師に迎え、オンライン講座を行います。参加費は無料です。

登録リンクはhttps://us02web.zoom.us/meeting/register/7Adg5WFmScScjcky9emppQ#/registration 

「空手の日」に学ぶ:沖縄伝統空手の知られざる歴史


日本時間 10月26日(日)午前10時ー12時

(カナダ・バンクーバー 10月25日(土)午後6-8時;アルバータ 午後7-9時;トロント・モントリオール 午後9ー11時)


講師:マースィエンセン和美さん

司会:乗松聡子

10月25日は「空手の日」です。この日にちなみ、カナダ9条の会のメンバーでもある、アルバータ州レスブリッジに住む空手家、マースィエンセン和美さんをお招きしてウェビナーを行います。(カナダでは10月25日、日本では10月26日になります。)

和美さんが空手を習い始めた頃、稽古中に「伝統空手」と「スポーツ空手」という言葉を聞くことが頻繁にありました。「伝統空手」と「スポーツ空手」の違いは何なのか、そして「スポーツ空手」とは何だろうという疑問を持ち始め、調べ始めたら、自分の知らなかった沖縄伝統空手の衝撃な歴史、「伝統空手」と「スポーツ空手」の違いが明らかになっていきました。このウェビナーでは、スポーツ空手が生まれた背景と、和美さんから見た、沖縄伝統空手について話します。

マースィエンセン和美 プロフィール: 沖縄県出身。現在はアルバータ州、レスブリッジに在住。2001年から金城嘉孝先生の道場(剛泊会空手道)で伝統空手を習い始める。2011年に、レスブリッジ大学美術学部:スタジオアート科を卒業。2016年に、沖縄の基地問題をテーマにしたアートの個展をレスブリッジ市内のギャラリーで開く。2017年にはエドモントン、2019年には沖縄県南風原町で展示。

貴重な機会をお見逃しなく!登録は

https://us02web.zoom.us/meeting/register/7Adg5WFmScScjcky9emppQ#/registration


過去報道より:

Saturday, September 27, 2025

日朝国交正常化のためには、日本人が変わらなければいけない (9月27日シンポジウム「日朝ピョンヤン宣言から23年 国交正常化を求めて」乗松聡子発言) Normalization of Japan–DPRK Relations Requires Change in Japan

 9月27日、日本教育会館にて日朝全国ネット主催シンポジウム「日朝ピョンヤン宣言から23年 国交正常化を求めて」が開催されました。会場は立ち見が出るほどの盛況でした。和田春樹さん、李柄輝さんとともに登壇させていただいたのは大変光栄でした。お呼びいただいた藤本さんはじめ日朝全国ネットのみなさまに感謝します。そこでの乗松聡子の発言内容をここに紹介します。朝鮮がロシアに連帯したウクライナ戦争についてちゃんと理解することは大事だったので踏み込んで語りました。会場から反発は出ず、逆に、賛同の声、「自分の言いたいことを全部言ってくれた」との声、出版社の人からも、「ロシアを悪者扱いするような本は出さないようにしている」といった声が聞かれ希望を感じました。質疑応答で話題になった、ジェフリー・サックスやジョン・ミアシャイマーの言論も日本にある程度浸透しているとも感じました。時代は動き、メディアリテラシーのある人にはもう、西側のプロパガンダは通用しなくなってきていると感じます。朝鮮が「グローバル・マジョリティ」の一員であるという認識をみなさんと共有しました。


関連報道:
朝・日国交正常化の進展を/日朝全国ネット、東京で総会とシンポ

国交正常化の課題を問う/シンポジウム「日朝ピョンヤン宣言から23年」

高校、幼保無償化適用を要請/日朝全国ネット、国会議員が文科省へ


日朝国交正常化のためには、日本人が変わらなければいけない

 

2025年9月27日 乗松聡子

 

こんにちは、乗松聡子です。カナダに通算30年住んでいる日本人です。一昨日到着しました。きょうは、お招きをありがとうございました。

まず結論を最初に言います。

いま、米国が率いる西側帝国主義が破壊的戦争を続けています。ガザのジェノサイドはその典型です。

日本は、西側帝国に組み込まれたままの「名誉白人」国家です。G7に非白人国家として一国だけ参加しているのが象徴的です。

いま、グローバルサウスによる、脱植民地の動きが高まっています。西側帝国に搾取されてきた国々が、もうやられっぱなしにならないと、手を結んでいます。BRICSや上海協力機構の発展が目覚ましいです。

対ロシア制裁やトランプ関税も、非西側の結束を高める結果となっています。世界の貿易の脱ドル化が進んでいます。

そのグローバルサウスはいまやグローバル・マジョリティとも呼ばれます。朝鮮はグローバル・マジョリティの一員です。逆に取り残されているのは米国の属国である日本です。 

日本には、米国の呪縛を解き、アジアに戻ってもらいたいと思っています。

東アジアの平和を阻む要素ではなく、平和をつくる一員となってほしいです。そのためには朝鮮、中国、ロシアを理解、尊重することは不可欠です。

日朝国交正常化のためには、変わらなければいけないのは日本です。以下の項目について順にコメントします。

n  呼称問題

まずは、「北朝鮮」という呼称についてです。国の名前でさえないこの呼称がいまだに蔓延しています。

これは朝鮮を国として認めていなかった植民地支配時代の名残だという批判があります。私もそう思います。

韓国のことは国名で呼ぶのに朝鮮についてはそれを拒否する。これは差別としかいえません。

わたしは2019年訪朝したときに、まず国名を説明されました。朝鮮民主主義人民共和国、略すときは「朝鮮」であると。「鮮やかな朝の国」と説明されました。

その旅の中で、早朝にテドンガンのほとりを歩いたとき、朝日が射した川面の鮮やかさに目を奪われ、その意味がわかりました。これが当事者の望む呼び方です。 

日本の戦争時代、北米にいた日系人は敵性外国人とされ強制収容所に送られ、JAPと呼ばれました。今もカナダに暮らしていて、日系人コミュニティの中にこの傷が深く残っていることを実感します。JAPと呼ばれてもいいと思っている日本人や日系人はいないでしょう。それと同じです。 

日本メディアは、2002年日朝会談まではおおむね「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」と、併記する方法を取ってきました。これも問題だったのですが、会談で金正日国防委員長が「拉致」を認め、日本国内で憎悪感情が沸き起こりました。その年の年末、朝日新聞が、もう併用はせずに「北朝鮮」を使うと宣言し、NHKも2003年から変わりました

朝鮮は、「北朝鮮と呼ぶな」という要求を繰り返し日本に対して行っています。2003年1月29日づけの「労働新聞」で、朝日新聞による「北朝鮮」呼称決定を批判しています。2005年にも、「北朝鮮」と呼ぶことは「わが国の存在と権威を無視する行為だ」と言っています。

日本は国交を正常化するためにも、相手国をその国の名前で呼ぶという最低限のリスペクトを示してこそ、スタート地点に立てるのではないでしょうか。

n  拉致問題

拉致問題は重大な人権侵害でした。ただ、私がいまだに理解できないのは、ふつう事実認定と謝罪をすればそれが和解への第一歩になると思うのですが、この場合、それがきっかけで逆に朝鮮に対するヘイトが増したことです。 

広島と長崎の原爆投下や都市空襲においては民間人が何十万人も殺されていますが、米国は謝罪もしていません。それなのに日本人の大半はアメリカが大好きです。この違いは何なのでしょう。 

訪朝したとき、通訳ガイドをしてくれた金さんが言っていました。あの頃は日本との国交正常化の期待から、日本語熱が高まったが、いまや日本語への需要も減ってしまったと。あの日朝会談はやらなかったほうが良かったかもしれないと。それを聞いてとても悲しく思いました。 

この問題は、被害者中心主義で取り組まれたとは言い難く、日本の保守政治家や右翼運動家が、政治利用のために解決を先延ばしにしてきました。 

しかし、拉致問題を利用して朝鮮を敵視する政策が、なぜ政治的プラスになってしまうのでしょうか。日本の一般市民はそんなに朝鮮をヘイトしたいのでしょうか。ここに根本的な問題があると思います。 

何より、日朝平壌宣言では、植民地支配で「朝鮮の人々に多大な損害と苦痛を与えた」歴史への「痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」にもとづいた、植民地支配の清算と同時に取り組む問題だったはずです。 

植民地支配時約2500万人いた朝鮮人のうち3分の1,約800万人が強制動員や日本軍性奴隷として動員され、多くの人が命を奪われました。

これについて朝鮮側には償いや清算が全く行われていないどころか、在日朝鮮人の人権侵害、朝鮮学校差別、ヘイトスピーチの蔓延という形で、解放後80年の現在も植民地主義が続いています。 

気の遠くなるような規模の植民地被害を全く語らずに、拉致、拉致とだけ叫ぶ日本メディアと日本人は、ダブルスタンダードを露呈しているとしか言い様がありません。 

日本に帰るたびに思いますが、日本の人たちは拉致被害者や家族の名前をよく知っており、自分の家族か親戚かのように語ります。メディアの影響でしょうが、これが正直不気味で怖いです。この人たちは、日本の植民地支配による被害者の名前を一人でも言えるでしょうか。 

拉致問題は、日朝平壌宣言がいうように、日朝の間に横たわる多くの人権問題の一つであるという認識に立ち返る必要があると思います。そのためには被害者意識に偏った日本人の歴史認識を問い直さなければいけません。 

n  朝鮮学校、幼稚園無償化排除問題

2019年9月、金丸信吾さんの訪朝団が宋日昊(ソン・イルホ)日朝国交正常化交渉担当大使と会ったとき、朝鮮学校無償化除外の撤回がないかぎり「日朝関係は 1 ミリたりとも動かない」と言っています。朝鮮学校差別は国交正常化への大きな障害となっています。 

カナダでは日系人強制収容という歴史がありましたが、1988年にリドレスと呼ばれる、政府による謝罪と補償がありました。それは個々の被害者に補償しただけではなく、民族としての存在の権利を保障されたのです。そのおかげもあって、私はカナダで子どもを日本語学校に行かせ、日本文化に触れさせながら育てましたし、それで差別されたことはありません。 

私たちは好きでカナダに移住しましたが、朝鮮学校は、植民地支配があったゆえに奪われた文化や言語を取り戻すために作られたのです。本来は、償いの意味も含め、他の民族にもまして手厚くするのが当たり前です。 

しかし日本は正反対で、朝鮮学校を標的にして無償化から排除し、補助金を切り、存続の危機に追いやっています。これは民族抹殺、エスニッククレンジングの行為であると思います。

この問題は他の問題に比べ、日本政府の決断だけですぐ変えられる、比較的容易な問題です。明日にでも差別をやめるべきです。それで日朝国交正常化に一歩近づけます。

n  朝鮮半島の非核化

 「朝鮮半島の非核化」と、「朝鮮民主主義人民共和国の非核化」は全く違う概念であるのに、日本政府やメディアはこの違いをはっきりさせず、「北朝鮮の非核化」という概念を平気で語り続けています。

朝鮮にだけ非核化を求めるということは、すでに圧倒的に非対称な米国の核の脅威をまったく問題視せず、朝鮮にだけ身ぐるみはげということです。

相手の身になって考えてみればわかります。イラクやリビアのように敵視され指導者が残酷な方法で殺され、国を壊されたケースをみれば、朝鮮が核兵器をもって米国から身を守ろうとするのは当然のことです。

だから、非核化を語るのなら朝鮮半島における米国の核の脅威をなくすことが必要なのです。

先日、李柄輝先生の講座にオンラインで出たとき、「“朝鮮半島の非核化”とは朝鮮にとっては具体的にどういう意味なのか」ということを聞きました。

答えは、「米国は、弾道ミサイルから爆撃機・空母まで、多様な手段を通じて、迅速に朝鮮に核攻撃を加える態勢を維持している。そのような核攻撃能力を排除することが朝鮮半島の非核化である」とのことでした。

韓国と日本の米軍の存在自体が朝鮮にとっての核の脅威なのです。 

西側の言い分は、核のダブルスタンダードとしか言えません。西側の核はいいが、西側の敵の核は悪い。だから、ロシア、中国、朝鮮、イランの核は「悪い核」で、米国や同盟国の核は「良い核」だということです。イスラエルも核兵器を持っているのに査察も制裁もありません。

米国だけは何をやっても許される、という例外主義を日本も内在化しています。歴代の広島と長崎の式典での市長による平和宣言ではどこの国が原爆を落としたかを一度も言ったことがありません。日本被団協のノーベル平和賞の受賞スピーチでもそうでした。逆にロシアの核を名指しで批判していました。

敵視というのは戦争の前段階です。平和運動でさえ、政府と一緒になって特定の国を敵視するのです。戦争につながる敵対構造をあえて強化しながら核兵器廃絶などできないと思います。

n  グローバル・マジョリティの時代

9月3日に北京で開催された、「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80年記念大会」(この後は9.3と呼びます)では、習近平主席が、朝鮮の金正恩委員長とロシアのウラジミール・プーチン大統領とともにこの重要な節目を祝いました。画期的なことでした。 

しかし日本のメディア報道は、「良好な関係を誇示する」とか、「世界に結束を見せつける」という語調ばかりで、そこには加害国としての反省も、敗戦国としての謙虚さも見えません。

この催しは第一義的に、80年前の、大日本帝国を倒した記念日のお祝いです。日本人は米国と戦い、米国に負けたとしか思っていない人が多いので、この式典の意味がわからないのかもしれません。

米国の原爆投下が日本の降伏を決定的にしたかのように言われることが多いですが、実際はソ連の満州侵攻が大きな役割を果たしました。2月の日朝全国ネット創立パーティーにも来た、ピーター・カズニック教授など先進的な歴史家は、ソビエト侵攻のほうが大きな役割だったと言っています。

朝鮮は、40年の植民地支配の中で独立のために闘いました。1945年9月2日、戦艦ミズーリにおける降伏調印式で日本を代表した重光葵外相が足をひきずる姿に、私は「朝鮮は戦勝国である」という証を見ました。 

1932年、大韓民国臨時政府の命を受けた独立運動家ユンボンギルが義挙した「上海天長節爆弾事件」で片足を失っていました。 

今回、西側諸国がほとんど参加しなかった中、韓国からウ・ウォンシク国会議長が参加したのも、抗日戦争の勝者の一員であるということを印象付けました。 

来賓の26か国のうち、アジア太平洋戦争で日本の被害を受けた国々は他にも、インドネシア、マレーシア、べトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどが参加していました。

これらの国々は日本帝国主義を倒した日を共に祝う資格があります。米国、英国など他の連合国も参加すればよかったのです。

BRICSプラスパートナー諸国の20か国は、いまや購買力平価(PPP)ベースで世界のGDPのおよそ半分を占めており、人口では世界全体の過半数を超える規模となっています。

文字通り「グローバル・マジョリティ」になってきているのです。

習近平主席が9.3の演説で触れましたがBRICS側はウィンウィンの関係を求めているのに米国はゼロサムの関係、つまり自らの覇権を維持することにしか関心がありません。

だから米国は対決姿勢を強め、制裁、関税などで他国を疎外しています。それが結果的にグローバル・マジョリティの国々の結束を強めています。

さきほど敵視政策の話をしましたが、米国は敵視どころではありません。この89月だけでも、ウルチ・フリーダム・シールド(米韓)、フリーダム・エッジ(日米韓)、レゾリュート・ドラゴン(日米)という、大規模演習を行いました。

米軍基地で中国や朝鮮を取り囲み、中国が言い出したわけでもない「台湾有事」という概念を作りだし、戦争を煽っています。

米国が、中国や朝鮮の目と鼻の先でやっていることを、中国や朝鮮が米国沿岸でやったらどうなのでしょう?許されるはずがありません。

それなのに西側メディアは、9.3の式典における閲兵式を、「米国主導の国際秩序に対する強硬姿勢」と言って批判しました。

これだけ威嚇しておいて、中国は、国内で閲兵式をやることさえ許されないのでしょうか。

逆に、日本や欧米が「国際社会」と呼んでいる西側諸国は、世界の人口の15%にも満たないマイノリティなのです。グローバル・マジョリティが力をつけ、西側諸国にもう搾取はさせないという非西側国の、脱植民地主義の動きが加速しています。 

朝鮮はその流れの中にいます。9.3の式典に金正恩委員長が行ったことは、その世界の流れに朝鮮も確実に加わったという宣言にも見えました。 

n  米国が仕掛けた戦争

ロシアの特別軍事作戦について西側では、Unprovoked という枕詞とともに、ロシアが突然ウクライナを侵略した戦争だというナラティブが席捲しました。実際は違います。端的に言うと、この戦争は30年以上前にさかのぼります。ロシアが始めた戦争ではありません。米国が始めた戦争です。

米国のジャーナリスト、スコット・ホートン氏が昨年「Provoked」という分厚い本を出しました。7000のソースを使った、700ページの本で、どれだけ米国がロシアを威嚇してきたかーパパブッシュからバイデンにいたるまで、徹底的に記述しています。

冷戦が終結し、存在意義がなくなったはずのNATOは約束に反して東方拡大を続けました。2014年、米国は、ウクライナのナチス勢力を利用して、ウクライナ政権を転覆させます。民主的デモを装って、その国を自分の思い通りになる政権に取り換える米国の常套手段です。

それ以来、ウクライナの傀儡政権は東部ドンバス地方のロシア系住民を徹底的に迫害しました。グラートというロケット弾で市民に対し無差別攻撃を行いました。ドンバスの内戦では、国連によると1万4千人が命を落としました。

和平のためのミンスク合意も、西側が踏みにじりました。21年12月ロシアから米国への安全保障のための条約案もすべて米国が拒絶しました。22年2月、ウクライナによるドンバス攻撃が激化する中、とうとうロシアはドネツクとルガンスクの独立を承認し、特別軍事作戦に踏み切ったのです。 

目的はウクライナ征服でも欧州侵略でもありません。自国と、ロシア系住民を守るためのウクライナ中立化、非ナチ化です。やりたくてやっているのではありません。

ウクライナ戦争の根本の原因を理解することは、朝鮮のロシア派兵を理解するためにも不可欠と思います。

米国およびNATOが束になってロシアを攻撃している中、ロシアも同盟国を持つことが許されていいはずです。

ロシアと朝鮮は24年、包括的戦略パートナーシップ条約を結び、その同盟関係のもとで朝鮮は派兵しました。派兵先は、ウクライナに攻撃されたロシア国内のクルスクの防衛に限定していました。

朝鮮兵は100人以上が戦死したと聞いています。ご遺族のお気持ちを思うと、計り知れない悲しみであったと想像します。

ただ、朝鮮がロシアと連帯したことについては、正しかったと思います。

ロシアの特別軍事作戦は、世界で内政介入と戦争を繰り返す西側帝国に対する、脱植民地主義の闘いの一つです。それに朝鮮が連帯したということは、朝鮮がthe right side of history、歴史の正しい側についたということです。

n  平和主義と脱植民地主義 

このような話をすると、絶対的平和主義の立場から、戦争はいけない、非暴力でやらないといけない、核兵器はいけない、といったことを言う人たちが必ず出てきます。

わたしはこのような見方を、平和主義をかざしながら、脱植民地の闘いを抑えつける、一種の帝国主義であると思います。

それは平和主義でさえありません。誰かを踏みつけた上での「平和」など、平和とは言えないからです。(クォン・ヒョクテ『平和なき「平和主義」』)。

米軍基地を押し付けられている沖縄の人が、「日本が受け入れると決めた米軍基地は、沖縄ではなく日本本土に置け」という当然の要求を、「基地はどこにも要らない」と言って抑えつけるのもこのパターンです。 

植民地支配しておいて、ユンボンギル義士のような蜂起行動を「テロリスト」と呼ぶのもそのパターンです。80年近くにおよぶイスラエルによるパレスチナ民族浄化という背景で起こった23年10月7日のハマスの蜂起についても、テロリスト扱いがいまだに西側に蔓延しています。 

圧倒的非対称の構造で長年抑圧しておいて、被抑圧のほうが少しでも抵抗すると、暴力的だ!テロだ!といって100倍返しをするのです。 

非難すべきはどちらでしょうか。

あらゆる平和的、外交的、政治的手段を奪われた民族が武装蜂起することを、奪っている側が責めることはできません。法政大学のシン・チャンウ教授の著書『植民地戦争』にあるように、「抵抗する側の視点」からの正当性を持つ戦争です。 

日本の人たちは、「9条」や「平和」や「核廃絶」という、聞こえのよい言葉に乗せた「帝国主義的平和主義」を振り返る必要があります。 

沖縄や韓国の軍事化を前提にしながら語る「9条の平和」。米国の核の傘を前提に語る「核兵器廃絶」。日本を被害者として宣伝する「唯一の被爆国」という概念で、その暴力性は増幅します。 

いまこそ、日本人はやられた側に立っての捉えなおし、語り直しが必要と思います。植民地支配されたことのない民族だからこそ、想像力をはたらかせる必要があります。 

n  日朝全国ネットの役割

 世界で、グローバル・マジョリティによる、大きな脱植民地の流れ、多極化とも言われる流れに朝鮮が参加しています。米国および西側諸国はこのままゼロサムの闘いを続け滅亡の道を歩むのか、それともウィンウィンの新しい世界秩序に参加するのかの岐路に立っています。

日本はアジアに位置しながら、なお「脱亜入欧」の道を歩み続けています。果たして、このまま米国に従属し、戦争と破壊の道をともにするのでしょうか。それとも、再びアジアの一員となり、地域の平和と自己決定権に貢献するのでしょうか。

朝鮮との国交正常化は、日本が「グローバル・マジョリティ」に受け入れられる可能性があるかどうかを示す、試金石になるのではないかと考えます。

それを可能にするため、日朝全国ネットは、朝鮮への理解と友好を推進する活動をどんどん行っていけばいいと思います。自分たちがマジョリティであると、自信を持っていいと思います。 

(おわり)

Friday, September 19, 2025

シンポジウム 日朝ピョンヤン宣言から23年 - 国交正常化の進展をもとめて Symposium Commemorating the 23rd Anniversary of Japan-DPRK Pyongyang Declaration - Towards the Normalization of Diplomatic Relations

イベントのお知らせです。

「日本と朝鮮を結ぶネットワーク」(日朝全国ネット)戦後80年企画第三弾ということで、シンポジウムが9月27日(土)、東京の日本教育会館にて開催されます。

日朝全国ネットは今年2月に結成された、日本と朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の友好連帯を推進するためのネットワークです。活動は、①日朝国交正常化(日朝市民交流強化、朝鮮訪問活動、植民地支配の歴史清算)、②在日朝鮮人の権利確立(民族教育権の確立、朝鮮学校への差別撤廃、在日朝鮮人差別の排除)、③東北アジアの平和と安定(朝鮮戦争の終結と平和協定締結)です。詳しくは結成のときの報道をご覧ください。

「日本と朝鮮を結ぶ全国ネットワーク」結成/ 中央・地方86の友好団体が参加

ブログ運営人の乗松聡子が登壇します。ふるってお越しください。お問い合わせの電話番号、メールアドレスはチラシに記載されています。↓


日朝平壌宣言とは、2002年9月17日に北朝鮮の首都ピョンヤンで、日本の小泉純一郎首相と北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が署名した共同宣言です。両国の国交正常化を目指すための基本文書として位置づけられています。

日本語の原文(外務省HPより)



Thursday, September 18, 2025

東京の中国大使館で、映画『南京照相館』の特別上映会開催!央视新闻(CCTV)報道の日本語訳 Film Dead To Rights screening was held at the Chinese Embassy in Tokyo

会場で参加者が撮影。

(9月19日追記。乗松聡子のビデオメッセージの原稿を、下方に貼り付けました。ネタバレになる内容ではないです) 

9月17日、東京の中国大使館で、中国中央広播電視総台主催で、映画『南京照相館』の特別上映会がありました。私は招待をいただきましたがカナダにいて行けなかったのでビデオメッセージで参加させていただきました。央视新闻(CCTV)による中国語の報道をここで日本語に勝手に訳して紹介します。(自分が「ベテランジャーナリスト」と呼ばれており大変恥ずかしく、本物のベテランジャーナリストの皆さんに申し訳ないですが、翻訳なのでお許しくださいm(__)m)(★AI訳で、私は翻訳の正確さを確認する能力をもたないので、翻訳がおかしいと思われる場合は原文を参照ください。 翻訳はアップ後修正することがあります。 )

いま全世界で上映中で高い評価を得ているこの映画、日本での上映をするべきと思います。 


《南京照相馆》在日本专场放映 日本观众呼吁正视历史深刻反思

(以下翻訳)
《南京照相館》が日本で特別上映 日本の観客が歴史を正視し深く反省するよう呼びかけ

17日、中央广播电视总台(中国中央広播電視総台)の主催、中国駐日本大使館の協力による映画《南京照相館》日本特別上映イベントが東京で行われた。日本国際貿易促進協会、日中労働者交流協会、東京都日中友好協会、ならびに日本の高校・研究機関、メディア・出版機関の代表、そして在日華僑華人など150人余りが鑑賞した。上映終了後、日本の観客はその場で深い議論を交わし、口々に作品は真実で衝撃的であると述べ、日本社会に対し歴史を正視し、平和を大切にするよう呼びかけた。

△《南京照相館》日本特別上映イベント

中国駐日本大使の吴江浩氏はイベント会場でのあいさつの中で、真実の歴史は映画よりもさらに残酷であり、今回の上映イベントを開催するのは歴史を記憶し、平和を守るためであって、憎しみを引き継ぐためではないと指摘した。

大使は強調した――
「私たちは日本各界の有識者とともに、歴史を鑑として未来に向かい、共に歴史の真相と人類の良知・正義を守り、歴史の悲劇を二度と繰り返させてはならない。両国の人々が世世代代にわたって友好であり続けるようにしたい。」

△中国駐日本大使・吴江浩氏によるあいさつ

日本NHKテレビ番組の常任ゲストであり、著名な翻訳家の神崎多実子氏は、《南京照相館》が強調しているのは平和を呼びかけることであり、同作品をめぐって日本で現れている中傷の声はまさに日本社会における歴史認識の深刻な問題を反映していると述べた。

彼女は率直に語った――
もし日本が加害の事実をひたすら回避し、被害の物語だけを一方的に強調し続けるならば、日本は危険な状況に陥り、また日中両国関係の健全な発展も実現できないだろう。


日本の著名な翻訳家・神崎多実子氏による発言

日本の軍事問題評論家・小西誠氏は、《南京照相館》は南京大虐殺の痛ましい歴史を明らかにしただけでなく、今日の日本社会に依然として存在する歴史否認の現象をも映し出していると指摘した。

彼は述べた――
中国政府と人民は常に寛大な胸懐と平和への願いを示してきた。この映画は重要な教育的意義を持ち、より多くの日本国民が見るべきである。

△日本の軍事問題評論家・小西誠氏による発言

日本青年代表であり、東京都日中友好協会副理事長の井上正順氏は、今回のイベントは両国の青年層および異なる世代の間で歴史の記憶をめぐる健全な対話を展開するための重要な契機となったと述べた。

彼は強調した――
日本が歴史を正視し、「二度と戦争を起こさない」という約束を着実に実践してこそ、日中両国関係を友好協力の方向へ健全に発展させることができる。

東京都日中友好協会副理事長・井上正順氏による発言

カナダ在住の日本のベテランジャーナリスト・乗松聡子氏はビデオ通話を通じて、映画は歴史の痛みを強く感じさせるものであり、日本が映像作品を利用して「被害の物語」を強調する一方で、《南京照相館》に「反日」というレッテルを貼るのはきわめて不合理であると述べた。

彼女は指摘した――
かつての加害者である日本人は、この映画を真剣に鑑賞し、深く反省すべきである。

△日本のベテランジャーナリスト・乗松聡子氏による現場でのビデオ発言

複数の観客は総台(中国中央広播電視総台)の記者の取材に応じ、第二次世界大戦からすでに80年が経過し、日本の多くの若者は歴史への認識がますます曖昧になり、正しい歴史観を形成することすら難しくなっていると述べた。

戦争の歴史に全面的かつ客観的に向き合い、反省することは、両国関係を健全に発展させる鍵であり、双方の理解と相互信頼を深める重要な基盤でもある。こうした上映活動は非常に必要であり、日本の右翼勢力が本作を悪意をもって中傷する状況の中で、鑑賞の機会を得られることはきわめて貴重であり、この映画はより多くの人々が見るべきだ、と語った。

(翻訳以上)

原文の中国語報道はここです。

ほか、このような報道があります。

驻日本大使吴江浩出席《南京照相馆》放映会https://mp.weixin.qq.com/s/xxmbnYzuQ32ejo0l2-ENzg 

《南京照相馆》东京放映 中日人士共呼以史为鉴https://h.xinhuaxmt.com/vh512/share/12738441?docid=12738441&newstype=1001&d=1350126&channel=weixin

以下、乗松聡子のビデオメッセージです。

25年9月17日 東京の中国大使館での映画「南京照相館」特別上映会へのメッセージ

みなさんこんにちは。乗松聡子と申します。このたび、中国大使館での映画「南京照相館」の上映会にお招きいただき、ありがとうございます。

私はいまカナダ・バンクーバーにおり、直接伺うことができないため、このようにビデオメッセージで参加させていただくことをお許しください。

南京大虐殺をテーマにした映画はいままで、「映画 Nanking」、「アイリス・チャン」、「ジョン・ラーベ」「南京!南京!」など観たことがありますが、「南京照相館」は、私にとって、いままでにない特別な体験になりました

私は封切りの8月15日の前日の夜、先行上映していた、隣町のリッチモンドという、チャイニーズ系の住民が多い町の映画館で観ました。

劇場は満席でした。若い人たちが目立っていました。映画の終盤、劇場のあちこちからすすり泣きが聞こえてきました。私も泣きました。終わった後も、座席に残って号泣している人がいました。圧倒される体験でした。


1) 映画で歴史に埋没した

とにかく、主人公のみなさんに、感情移入しました。

郵便局員が、にわかに写真館の技師となったアータイ(阿泰)、生き延びるために日本軍に従ったグアンハイ(広海 Guǎnghǎi)、駆け出し女優のユィシウ(毓秀 Yùxiù)、写真館店主のラオジン(老金lǎojīn)、妻のイーファン(宜芳 Yífāng)と、子どもたち。祖国のために戦ったソン(宋)警官。(注:名前は、映画の中で主に呼ばれていた名前または愛称)

地下室で、みながなけなしの食べ物を持ち寄り、支え合いました。

過去に観た南京大虐殺の映画では、私はあくまで日本人として、日本の加害に向き合うために観ていたと思います。

でもこの映画では、我を忘れ、登場人物になりきってしまいました。

特にユィシウに同化しました。彼女が泣くときは一緒に泣きました。

映画の中で、歴史の中に生きる一人の人間として埋没したのです。それによって今までよりさらに、被害者の身になってこの歴史を観られるようになったような気がします。


2) 日本軍が破壊したものを目の当たりにした

私が一番心を揺さぶられたシーンは、家族が別れ別れになる前夜、ラオジンが、中国の数々の風光明媚な景色が描かれているバックスクリーンを、見せる場面でした。

紫禁城、万里の長城、杭州の西湖、・・・天津や武漢の風景もあったと記憶しています。

生き延びてこの美しい祖国を守りたい。もう二度と侵略を許さないという、この映画の強いメッセージを受け取りました。

これを見て思い出したのが2007年、はじめて南京を訪れたときです。友人の家族にホームステイさせてもらいました。

そこの家の人たちに、孫文の墓である中山陵、紫禁山、夫子廟、玄武湖公園などに連れていってもらい、地元の食事をご馳走になりました。

私は虐殺の歴史を学びに行ったつもりだったのですが、虐殺関係の施設よりも、かえって、このように、南京の歴史、文化、地元の人たちの生活を目の当たりにすることで、日本軍が破壊したものが何だったのかが、より明確に浮かび上がってきたのです。

映画のこのシーンも、そのような効果があるような気がします。

南京の友人に聞きましたが、ラオジンを演じた役者、ワン・シャオさんは完璧な南京ことばを話していたそうです。

南京出身の彼にとっては演技以上の意味がある映画ではなかったかと想像します。


3) 日本の人にこそ見てほしい。平和を共に作るために

この映画が世界中で公開されているのに日本の人だけが見られないのはおかしいです。

虐殺当時も、日本の人たちは何が起こっているかも知らず、全国で提灯行列や旗行列をやっていました。

それを繰り返してはいけません。この映画は捕虜の処刑、無差別殺りく、女性への暴力などを描いていますが、あまりにも残酷なところは見る人の想像に託している部分もあります。

子どもでも見られるような配慮がしてあると思いました。

それなのに日本では、「反日」とレッテルを貼られています。

日本の人は、広島や長崎の原爆の体験や、空襲などの被害の記憶を、体験者の話を聞いて、映画もつくり、語り継いでいます。

それなのに、中国の人たちが、日本軍の残虐行為を語り継ぐことを「反日」と言うのは、矛盾していませんか。

ほんとうは、加害側の日本人こそが進んで学び、語り継ぐことです。

最後に、伊藤秀夫中尉を演じた原島大地さんは97年生まれ、父が日本人、母が中国人の俳優のようです。

南京大虐殺の日本軍人の役を演じることは容易なことではなかったと思います。

彼のような存在が、日中の若者が、過去の痛みを忘れず、ともにこれから平和をつくる、象徴となれると思います。

この映画に参加した日本の人たちの勇気に敬意を表し、見習いたいと思います。

ありがとうございました。