米国によるベネズエラ内政介入、制裁、戦争行為を手助けしてきたマリア・コリナ・マチャド氏のノーベル平和賞受賞について、ベネズエラ情勢をよく知っているジャーナリストやアナリストから多くの疑問の声が上がっています。そのうちのひとつ、『ジオポリティカル・エコノミー』より、 中南米の情勢に詳しいジャーナリスト、ベン・ノートン氏の最新記事の日本語訳を届けます。(AI訳に手をくわえたものです。翻訳はアップ後修正することがあります)
原文:
Nobel Peace Prize winner supports Israel’s genocide & Trump’s war on Venezuela
https://geopoliticaleconomy.com/2025/10/13/maria-corina-machado-israel-genocide-trump-war-venezuela/
ノーベル平和賞受賞者はイスラエルのジェノサイドとトランプの対ベネズエラ戦争を支持している
ノーベル平和賞受賞者マリア・コリナ・マチャドは、米国政府から資金提供を受けたベネズエラの極右クーデター計画者である。彼女はジェノサイドを行うイスラエルを支持し、マドゥロ大統領に対するトランプの体制転覆戦争の中心的存在である。
ベン・ノートン
2025年10月14日
2025年のノーベル平和賞は、数十年にわたって米国政府から資金提供を受けてきたベネズエラの極右クーデター指導者、マリア・コリナ・マチャドに授与された。
マチャドは公然と、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領率いる革命的チャビスタ政権を打倒するため、米軍によるベネズエラ侵攻を呼びかけてきた。
彼女は、ドナルド・トランプがベネズエラに対して仕掛けた戦争の中心にいる人物である。マチャドは、トランプ政権が根拠も証拠も示さずに「麻薬密売人を殺害している」と主張して行った、国際水域でのボート上のベネズエラ人に対する米軍の超法規的処刑を支持した。
またマチャドは、数十万人のベネズエラ人を死に追いやった、米国による違法で一方的な制裁も支持している。
さらにマチャドは、ガザでパレスチナ人民に対してジェノサイドを行っているイスラエルを断固として支持している。
戦争犯罪者へのノーベル平和賞
マチャドのような好戦的な極右のクーデター計画者にノーベル平和賞が授与されたという事実は、この賞がいかに極めて偽善的なものであるかを示している。
この偽善は、いまに始まったことではない。
米国の帝国主義的戦略家ヘンリー・キッシンジャーは、現代史上最悪の戦争犯罪人の一人であり、ベトナム、カンボジア、ラオス、バングラデシュ、チリなどで数百万の犠牲者の血に手を染めていたにもかかわらず、1973年にいわゆるノーベル平和賞を授与された。
また、元米国大統領バラク・オバマも2009年に同じく「ノーベル平和賞」を受賞したが、その政権はその後、絶え間ない戦争を遂行した。オバマはアフガニスタン、イラク、リビア、パキスタン、ソマリア、シリア、イエメンの7か国を爆撃した。
ノルウェーのノーベル委員会が偽善的だったのはこれが初めてではない。しかし、マリア・コリナ・マチャドに賞を与えることは特に常軌を逸している。なぜなら、第一に彼女がガザでのイスラエルによるジェノサイドを支持し、第二にドナルド・トランプと協力して戦争を仕掛け、暴力によってベネズエラ政府を転覆しようとしている、そのまさに只中での授与だからである。
マリア・コリナ・マチャドはイスラエルのジェノサイド政権を支持する
マチャドは、パレスチナ人民に対してジェノサイドを行ってきたイスラエルを公然と称賛してきた。
国際人道法の著名な専門家らが率いる国連が設置した委員会は、イスラエルがガザでジェノサイドを犯したことを明確に認定している。
2025年1月、マチャドはイスラエルのギデオン・サール外務大臣と電話会談を行い、「イスラエル外務省に感謝の意を表する」と述べ、「イスラエル政府の支援を非常に高く評価している」と語った。
このジェノサイド的なイスラエル政権は、ベネズエラの憲法に基づく国際的に承認された大統領ニコラス・マドゥロ政権を承認せず、代わりに米国が支援するクーデター指導者エドムンド・ゴンサレスを承認している。ゴンサレスはスペインに居住し、マチャドの代理人である。
2024年4月、イスラエルは侵略行為としてイランを攻撃し、テヘランは自衛のために反撃した。マチャドはすぐさまX(旧Twitter)に投稿し、イランを非難した。彼女は「イラン政権による直接的な攻撃の中にあって、イスラエル国家への連帯を表明する」と強調した。
マチャドは「イランとベネズエラ政権の同盟がもたらす危険」を非難し、もし米国が彼女をカラカスで政権に就かせることに成功した場合、米国およびイスラエルと連携し、イランとパレスチナ人民に対抗する密接な同盟を形成すると誓った。
2023年にもマチャドはイスラエル支持の投稿を行い、「イスラエルが長く幸福な存在であり続けることを願う」と述べ、ベネズエラの極右野党とジェノサイド的イスラエル政権は共通の「価値観」を共有していると付け加えた。
マチャドの極端な政治姿勢を最も明確に示す例のひとつが2018年である。彼女はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に公開書簡を送り、このジェノサイド指導者に対し、ベネズエラのマドゥロ大統領を打倒するための支援を求めた。
マチャドは書簡の中で、イスラエル、アルゼンチンの右翼政権、そしてその他の「国際社会」の国々に対し、マドゥロ政権に対する「体制転覆を実現するために必要な支援」をベネズエラ野党に与えるよう要請した。
また彼女は書簡の中で、「保護する責任(Responsibility to Protect)」というドクトリンを引用した。これは米国が2011年のリビア戦争を正当化するために用いたものである。米国主導のNATOによるその戦争は、かつて平和で安定し、繁栄していた石油資源豊富な北アフリカの国の中央政府を破壊し、奴隷市場が公然と存在する無法状態の破綻国家へと変えてしまった。
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マリア・コリナ・マチャドがイスラエルとアルゼンチンに対し、ベネズエラへの介入と「体制転覆(レジーム・チェンジ)」の実現を求めた2018年の公開書簡 |
現在、ネタニヤフは、彼の政権がガザで犯した人道に対する罪により、国際刑事裁判所(ICC)から指名手配されている。
ベネズエラはイスラエルと正式な外交関係を持っていない。両国の関係は、革命的指導者ウーゴ・チャベス元大統領およびその後継者マドゥロ大統領によって繰り返し断絶されてきた。両者はいずれもパレスチナ人民の強力な支持者であり、イスラエルのジェノサイドを厳しく非難している。
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ベネズエラ政府が公開した、ニコラス・マドゥロ大統領がパレスチナへの支持を表明している写真 |
マリア・コリナ・マチャドは、ドナルド・トランプによるベネズエラ体制転覆戦争の中心にいる人物
いわゆるノーベル平和賞をマリア・コリナ・マチャドに授与するというのは、彼女が現在、米国政府がベネズエラに対して行っている戦争の中心にいることを考えれば、さらに一層、常軌を逸した行為である。
ドナルド・トランプは複数回にわたって軍事攻撃を行い、罪状も裁判もないままに数十人のベネズエラ人を殺害してきた。国際法を公然と無視して、米軍はベネズエラ周辺の国際水域にあるボートを繰り返し爆撃し、何の証拠もなく、それらが「麻薬を密輸している人々」で一杯だったと主張している。
マチャドは、自国民を罪もなく処刑したこれらのトランプによる攻撃、すなわちベネズエラ人に対する超法規的殺害を含む一連の作戦を支持している。
『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューで、マチャド自身が、ベネズエラのマドゥロ大統領を打倒するため、米国政府と協力していることを認めている。
『フィナンシャル・タイムズ』紙はこう報じている――
「米国が南カリブ海に軍艦を展開したことで、ニコラス・マドゥロ大統領の打倒を目指す地下組織に、数千人のベネズエラ人が加わる動きを後押しした」。
トランプ政権はカリブ海に8隻の軍艦と数千人の兵士を派遣し、さらにプエルトリコにはF-35戦闘機10機を展開したと『フィナンシャル・タイムズ』は伝えている。同紙は、これは1994年の米国によるハイチ侵攻以来、同地域で最大の米軍増強であると指摘した。
「ベネズエラ野党の高官らは、マドゥロ打倒をどのように演出するかを話し合うため、トランプ政権の幹部と連絡を取っている」と同紙は報じている。
『フィナンシャル・タイムズ』はまた、マチャドの発言を引用している。彼女は脅迫的にこう述べた。――「国内外のこの一連の力が、マドゥロとその政権に『自分たちの時代は終わった』ことをますます理解させ、彼らにとって最善の選択肢は今すぐ権力を手放すことだと認識させている」。
米国が彼女を権力の座につけることに成功した場合、マチャドは何をしようとしているのか?
この極右の野党指導者は、別の『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューで、ベネズエラの莫大な石油資源を民営化したいと認めている。
「私たちは民営化し、市場を開放しなければなりません。まずはエネルギー部門から始めるのです」とマチャドは2023年に『フィナンシャル・タイムズ』に語った。
国営石油会社PDVSAの売却を呼びかけたうえで、彼女は南米ベネズエラが有する莫大な石油・天然ガス資源や高収益の鉱物についても、「すべて民間投資に開放することになる」と強調した。
同紙は、マチャドがベネズエラ国内で「過激な人物として知られている」とさりげなく言及しているが、これは控えめな表現にすぎない。マチャドは、暴力的で反民主的、かつ悪名高く腐敗したベネズエラ野党の極右急進派の指導者である。
トランプ、「ベネズエラを乗っ取り、石油を搾取したい」と発言
トランプが米国大統領として最初の任期を務めていた際、彼はベネズエラで新たなクーデターを仕掛けた。
2019年、ワシントンは、大統領選挙に一度も出馬したことのない右翼野党政治家フアン・グアイドを、いわゆる「暫定大統領」として一方的に指名した。
その後、米国と欧州の同盟国はベネズエラ政府の資産数十億ドル分を凍結・奪取し、それをクーデター資金として使用するとともに、腐敗したベネズエラ野党の有力者たちの私腹を肥やすために流用した。
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2020年2月、ホワイトハウスで米国大統領ドナルド・トランプと会談するベネズエラのクーデター指導者フアン・グアイド |
トランプのクーデター計画は、彼の大統領一期目の間に明らかに失敗に終わった。
2023年の共和党集会で、彼は米国の帝国が「ベネズエラを乗っ取り、その石油を略奪する」寸前まで行っていたのだと不満をあらわにし、怒りを込めてこう述べた。
「ベネズエラ。じゃあ、我々がベネズエラから石油を買うってのはどうだ? 私の前政権が終わったとき、ベネズエラは崩壊寸前だった。我々は乗っ取っていただろう。あのすべての石油を手に入れていたはずだ。あんなに近かったのに。」
実際、ノルウェーのノーベル委員会が、いわゆる平和賞をマチャドに授与すると発表した直後、トランプはホワイトハウスで記者会見を開いた。
その場でトランプは、マチャドが自分に電話をかけてきて、マドゥロ打倒を支援してくれたことへの感謝を述べたと明かした。
トランプは、ベネズエラの極右野党を支援してきたことを誇らしげに語り、次のように述べた。
「実際にノーベル賞を受賞した人が、今日(10月10日)私に電話をかけてきたんだ。そしてこう言った。『私はこの賞を、あなたに敬意を表して受け取ります。なぜなら本当はあなたこそが受け取るべき人だからです』とね。」
とても感じのいいことだったよ。私は『じゃあ、その賞を私にくれ』とは言わなかったけどね。彼女はそうしてもよかったかもしれない。とても感じのいい人だった。
それに私は、これまでずっと彼女を支援してきたんだ。ベネズエラでは多くの助けが必要だからね。」
マリア・コリナ・マチャドは、数十万人のベネズエラ人を死に追いやった違法な米国制裁を支持している
マチャドは長年にわたり、米国がベネズエラに対して国際法に違反する制裁をさらに強化するよう主張してきた。
これらの一方的な強制措置は、数十万人ものベネズエラ人の命を奪っている。
2017年、トランプがベネズエラに対して厳しい制裁を課した際、マチャドはそれを称賛し、次のように満足げにツイートした。
「これらの制裁は精密で効果的だ。金融、商業、政治に強い影響を与えるものだ。」
その翌年の2018年、マチャドは「この政権は力によってしか退陣しない」と主張し、「国際的な力――より多くの訴訟と制裁を」と要求した。
国際的な専門家たちは、ベネズエラに対する違法な米国の制裁が、少なくとも数万人、そしておそらく数十万人の死の原因となっていると指摘している。
著名な経済学者マーク・ワイズブロットとジェフリー・サックスは、米国の制裁が2017年から2018年のわずか1年間でベネズエラにおいて4万人以上の死を引き起こしたと算定した。
彼らの調査結果は、ワシントンD.C.の経済政策研究センター(Center for Economic and Policy Research=CEPR)による2019年の研究報告として発表された。
「制裁は食料と医薬品の入手可能性を低下させ、病気と死亡率を増加させた」と彼らは記している。
ワイズブロットとサックスはまた、「制裁が続けば、さらに数万人の回避可能な死をほぼ確実にもたらすだろう」と警告した。
実際、その後も一方的な強制措置は継続しており、違法な米国の制裁によって数十万人のベネズエラ民間人が命を落とした可能性が高い。
このことは、2025年に世界的な医学誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された査読付きの科学研究でも示唆されている。
この後者の研究によれば、一方的な経済制裁は過去50年間、毎年平均56万4千人の超過死亡を引き起こしてきたという。
経済学者マーク・ワイズブロット、フランシスコ・ロドリゲス、シルビオ・レンドンらは、制裁による死者の大半は5歳未満の子どもたちであると結論づけている。
米国は、国際法に違反して、一方的制裁の大半を課してきた責任を負っている。
つまり、ノーベル「平和」賞受賞者マリア・コリナ・マチャドは、自国民のうち数十万人、子どもを含む多くの命を奪った違法な強制措置を支持してきたことになる。
マルコ・ルビオ、マイク・ウォルツ、その他の米国政治家らがノルウェー・ノーベル委員会にマリア・コリナ・マチャドを推薦
米国政府関係者らは、ベネズエラのクーデター指導者マチャドに、いわゆる平和賞を授与するようノルウェー・ノーベル委員会に働きかける上で、重要な役割を果たした。
2024年8月26日、米国議会の複数の右翼議員が委員会に宛てて書簡(PDF)を送った。
「私たちは、マリア・コリナ・マチャドをノーベル平和賞候補として推薦することを支持します」とこの人たちは述べている。
署名者はいずれも共和党議員であった。中には、フロリダ州選出の上院議員リック・スコットとマルコ・ルビオ、下院議員マリオ・ディアス=バラール、マリア・エルビラ・サラザール、マイケル(マイク)・ウォルツ、ニール・ダン、カルロス・A・ヒメネス、そしてニューヨーク州選出のバイロン・ドナルズが含まれていた。
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ベネズエラのクーデター指導者マリア・コリナ・マチャドにノーベル平和賞を授与するよう、ノルウェー・ノーベル委員会に働きかけた米国共和党議員による2024年の書簡 |
現在、マルコ・ルビオはトランプに次ぐ米国政府内で二番目に強い権力を持つ人物である。彼は国務長官と国家安全保障担当大統領補佐官の両職を兼任している(米国史上、この二つの役職を同時に務めるのは、戦争犯罪人でありノーベル平和賞受賞者でもあるヘンリー・キッシンジャーに次いで二人目である)。
マイク・ウォルツはかつてトランプの国家安全保障補佐官を務め、現在は米国の国連大使である。
これらの米国政府高官たちは、マチャドやベネズエラの極端な極右野党と密接に連携し、マドゥロ大統領を暴力的に打倒しようと動いてきた。
ノーベル委員会がマチャドに「平和賞」を与えたことは、同委員会が米国帝国の道具として行動する意思を持ち、「平和」という言葉を皮肉にも利用して、さらなる戦争を正当化しようとしていることを示している。
(日本語訳以上)